岐阜大学医学部附属病院
院長小倉 真治

院長 小倉真治

病院・クリニック・医院

“疲弊しない救急医療体制”をつくれば、医師も救われる

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はじめに

地域の医療をリードする大学病院。岐阜大学医学部附属病院の院長である小倉真治先生は、この地の救急医療のレベルを上げるために尽力し、日本最大規模の高次救命治療センターを立ち上げました。
かつて岐阜県は、救急医療のレベルが全国ワースト5と言われたこともありましたが、現在では院内外における医療連携を強化し、ドクターヘリ年間稼働約500フライトを実現するなどして広域までカバーした救命救急体制を確立させています。
今回は、岐阜県の救急医療の礎を築いた小倉先生に、医療におけるこだわりやこれからのビジョンなどについて、お話を伺いました。

インタビュー

新しい学問領域で、 挑戦することに 意味があると思った

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

救急医の道を目指したきっかけを教えて下さい。

私は港町で育ちました。幼い頃から瀬戸内海航路を客船が行き来する様子を見ていて、将来は船乗りになりたいと思っていました。高校時代は理系に進んでいたため、船医(せんい)になってはどうかというアドバイスをもらって、医学部に進学したのです。

船上では航海中の丸3日間、1人で内科、外科すべての診療を迅速に行なう必要があります。私は昭和60年に岐阜大学医学部を卒業しましたが、当時は救急医療が学問体系として確立され始めた時期でした。船医に必要な“迅速な対応力”を身に付けたかったことや、まだ担い手が少ない分野で挑戦したいという想いがあって、救急の分野を志すことに決めました。

今は救急医療の構築や病院をより良くすることが私の役割ですが、いつか船医になりたいという気持ちもまだあります。

時間外診療と救急医療は違う 今、救急にはプロが求められている

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

救急医療に取り組まれる上で、どんなことを大切にしていますか。

“救急”という概念は時折、“時間外診療”と同じ意味であるかのように語られますが、それは違うというのが私の考えです。

時間外診療は、病院の受付時間外に診療を受けることですから、救急専門医がその場にいなくても良い。むしろ、すべての疾患を担う救急専門医よりも、産婦人科や消化器内科など各診療科の専門の医師が対応する方が的確な診療ができるでしょう。

一方で救急医療は、時間帯に関係なく急激に発症した外傷や疾患で病院を受診することです。重症の患者様を短時間で知り得た知見をもとに、例えその情報が不十分であっても治療を開始しなければならない。救急医には、緊急性が求められる現場における“決断力”を持つことが最も大切なのです。

限られた時間の中で、 いかにして治療を行なうか

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

若手の救急医には、どのような指導をされてきましたか。

「時間を大切にしなさい」と伝えています。救急医療は、治療方針の決断までに与えられる時間がとても短いのが特徴です。だからこそ、疾患を判断するためのデータを細かく、深く追及するのではなく、全体の症状を見て絶対に見落としてはいけない疾患をまず見極め、その治療に割く時間を確保できるように行動することが必要です。

また、「独りよがりではいけない」というのも、常に言っています。チーム医療では阿吽の呼吸ではなく、どういうプロセスで治療していくかを明確にして全員が共有することが必要です。時間がないからと言って、説明のできない医療をやってはいけないということです。

“疲弊しない救急医療体制”をつくれば、 医師も救われる

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

岐阜大学へ赴任された際、何を実現したいと考えていましたか。

救急は時間との戦いという話をしてきましたが、救急医は短時間での判断を求められること以外に、勤務時間が長いというイメージがあると思います。

私の新人時代は救急医が少なく、「1週間に100時間労働」という時代でした。しかし、過酷な勤務体制でスタッフが疲弊してしまえば、良い医療はできない。ですから、岐阜大学に赴任してからは“疲弊しないシステムづくり”をしようと思っていました。

今では、昼間は趣味に時間を使っている夜間担当の先生もいますし、子育てと両立しながら勤務を続けている女性医師もいます。私自身もアメリカ留学をしましたが、大学病院には学会や留学の機会も多く、研究を頑張っている先生もいます。

このように人材が豊富で医師それぞれのビジョンを尊重している救急医療チームは全国でも珍しいと思います。

院内や地域間で 連携を強化して、 医療の未来を明るくしたい。

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

高次救命治療センターの使命は何だとお考えですか。

熱傷、中毒、切断指の再接着、多発外傷の治療など、高度な救急治療を行なう目的でつくられたセンターも、設立から10年が経ちました。

年間約500フライトするドクターヘリは、今では岐阜県の山間部まで網羅していますし、情報システムの整備によって救急隊員からの情報や対応する医師の行動状況を“見える化”し、連携強化を実現してきました。

センターはこれからも、岐阜の救急医療の中核として、災害対応、スタッフの専門性強化、周辺医療機関との連携の中心的な存在として発展を続けていく必要があると考えています。

大学病院は 「サポートの分厚さ」が、 感じられるところ

岐阜大学医学部附属病院 小倉真治

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

高次救命治療センターを持つ当院は、真に患者様を救う体制が整備された病院です。

合併症もなく、一般的な診療が行なえる疾患であれば、ご自宅近くの病院を受診するのも良いと思いますが、何か起こったときの緊急対応や、重症対応に十分なサポート体制が整っているのは大学病院です。また、患者様を心から大切にするようなスタッフ教育を行なっております。

近隣の病院で紹介状を書いて頂ければ、初診もスムーズですし、先端機器を用いた診断のもとで高度な手術治療、放射線療法、化学療法が行なえます。

これからも、安全で質の高い医療を目指して参りますので、安心して受診して頂きたいと思います。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2014年8月

経歴

昭和34年

香川県生まれ

昭和60年

岐阜大学卒業 香川医科大学麻酔・救急医学専攻

平成9年

米国サウスキャロライナ医学大学 客員研究員

平成13年

香川医科大学附属病院 救急部助教授

平成15年

岐阜大学大学院医学系研究科 救急・災害医学分野教授

平成16年

岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター長(兼務)

平成26年

岐阜大学医学部附属病院 院長就任

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