兵庫医科大学病院 脳神経外科学講座 主任教授吉村 紳一

脳神経外科学講座主任教授 吉村紳一

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自分の体を知り、予防に努めれば脳卒中は対処できる!

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はじめに

兵庫医科大学病院は1972年(昭和47年)の開設以来、教育機関として医師を育成しながら、臨床にも重きをおいた大学病院です。病床数は約1,000床。最新の医療施設と機器を備え、高度な医療に取り組んでいます。そのひとつが脳神経外科。「脳脊髄を守る」をモットーに、年間手術件数は2016年(平成28年)は650件を超えています。脳神経外科学講座の主任教授、吉村紳一先生に、命を救う脳神経外科の意義や先進医療についてお話を伺いました。

インタビュー

父を救った外科医を見て、 自分も医師の道に

兵庫医科大学病院 吉村紳一

脳神経外科を志したきっかけを教えて下さい。

小学生のとき、父が胃がんの疑いで手術を受けました。がんは当時、絶望的な疾患でしたので、母は隠れて泣いていました。自分も将来に対する大きな不安を抱きましたが、幸い手術は成功し、しかも良性腫瘍でした。そのときの執刀医に対する母の尊敬の眼差しを見て、私も外科医になりたいと思ったのがきっかけです。

脳外科医を選んだのは、大学で所属していた軟式テニス部の顧問で脳外科教授の、故 山田弘先生のお人柄に惹かれたからです。その後、岐阜大学国立循環器病センターで臨床を学び、ハーバード大学留学中は「神経再生」の研究、チューリッヒ大学では脳神経外科手術のトレーニングを受けました。このような経験から、現在も手術と再生医療の研究を続けています。

万一の些細なミスも排除すべく、 完璧主義に徹する

兵庫医科大学病院 吉村紳一

脳外科医として、どんなことを大切にしていますか。

私たちにとって患者さんを良くすることこそ最大の目標です。当たり前と言えば、当たり前ですが、どんなすごい技術を使っても患者さんが悪くなったら意味がありません。結果がすべてなのです。それには手術の腕がいいだけでは不充分で、術前の準備から術後管理まで、すべてにおいて最善を尽くさないと駄目です。

このような私に対して、スタッフたちは「完璧主義」などと言うことがありますが、自分はそれを誇りに思っています。脳の手術は失敗が許されません。合併症の可能性をゼロにすることを目指して日々努力しているのです。

例えば、手術前の内服薬が効いているかどうかは必ずチェックします。そして、1種類でも効いていないということが分かると、私は万全を期して手術を延期して、薬を再調整します。そこまでこだわるのは、少しでも合併症の可能性を下げるためなのです。手術件数の実績はもうすぐ4,000件になりますが、治療成績はさらに良くなってきています。

一方で、最新治療でも救えない患者さんもいます。ですから私たちの施設では、新しい治療法を開発するための研究にも力を入れているのです。

二刀流で迷いなく 最適な治療法を提示できる

兵庫医科大学病院 吉村紳一

メスで行なう脳外科手術と、カテーテルで行なう脳血管内治療。先生はその両方に長けていて、「二刀流」と呼ばれていますが、両方に挑むのはなぜですか。

幸運にも若い頃から国内外のトップレベルの脳外科手術を学ぶ機会を得ましたが、一方で「切る手術」には限界があることも知りました。そこで「切らない手術」である血管内治療にも興味を持ったのです。

1990年代には、血管内治療の成績は良くありませんでしたが、私はその将来性に期待して、経験を積んできました。そのうち器具がどんどん開発されて、血管内治療は重要な治療法になりました。そんな経緯で、自分は幸運にも外科手術と血管内治療の両方ができるようになったのです。

自分自身が両方できれば、誰にも遠慮なく、患者さんにとってベストな方法を選ぶことができます。また、当院には手術室の中にカテーテル治療の機械を備えた「ハイブリッド手術室」がありますので、両方を組み合わせる難しい治療も可能で、遠方から患者さんがやってきています。

ますます進化する脳血管内治療と、 常識を覆す再生医療

兵庫医科大学のエントランス

脳神経外科の先進医療として注目しているのはどういう点ですか。

脳血管内治療は、新しい器具の導入によって、治療の幅がさらに広がっています。例えば、重症の脳梗塞に対しては、カテーテルを使って血管内の血の塊を取り除くことが可能になりました。この治療によって多くの方が自宅復帰できるようになっています。

また、大型脳動脈瘤には、これまでは大掛かりな外科手術が必要だったのですが、目の細かいメッシュの筒である「フローダイバーター」を用いることで切らずに根治できるようになったのも大きなトピックです。この治療は限られた病院でしか対応できませんので、全国から多くの患者さんが来院されています。

また、再生医療にも期待しています。麻痺の残ってしまった方に対し、細胞製剤を点滴することで麻痺などの後遺症を軽くしようという治療です。2016年(平成28年)に私たち兵庫医科大学では、脳梗塞の組織の中にも神経細胞を作る細胞があることを見つけて報告しました。この細胞を使って患者さんの障害を軽くできるのではないかと臨床研究に取り組んでいます。

自分の体を知り、 予防に努めれば 脳卒中は対処できる!

兵庫医科大学病院 吉村紳一

最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

脳卒中は、私たち日本人の国民病とも言われる程多い疾患。そして、ひとたび発症してしまうと手足の麻痺や言語障害、寝たきりなどの後遺症を来しやすい病のため何よりも予防が重要です。

脳卒中予防のためには、血圧や糖尿の管理など、健康管理に努めることが第一歩ですが、脳ドックなどで脳卒中の原因である脳動脈瘤や血管に細いところがないか、検査することも重要。脳卒中になる前に適切に対処すれば、ほとんどの脳卒中は予防できるのです。

もし発症してしまったら、とにかく一刻も早く救急車を呼んで病院を受診して下さい。時間が早ければ早い程良くなるチャンスが大きいのです。夜間でもすぐに病院に行きましょう。あとは私たちが精一杯頑張りますので、安心して受診して下さい。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2017年11月

経歴

昭和38年

岐阜県生まれ

平成元年

岐阜大学医学部卒業

平成4年

国立循環器病センター脳神経外科

平成7年

岐阜大学大学院脳神経外科

平成11年

ハーバード大学マサチューセッツ総合病院脳卒中研究室

平成12年

スイス・チューリヒ大学脳神経外科学

平成16年

岐阜大学大学院医学系研究科 助教授・臨床教授

平成25年

兵庫医科大学脳神経外科学講座 主任教授

平成26年

兵庫医科大学 脳卒中センター長(兼任)

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