セコム株式会社
代表取締役社長中山 泰男

代表取締役社長 中山泰男

サービス業

オープンな
企業文化をつくり、
未来の姿を描き出す。

文字サイズ

はじめに

「セコムしてますか?」でおなじみのセコム株式会社。現在、家庭向け、企業向けセキュリティシステムのみならず、防災、メディカル、保険、地理情報サービス、BPO・ICT、不動産など社会の様々な分野に「安全・安心」で「快適・便利」なサービスシステムを提供しています。平成28年5月、社長に就任された中山泰男さんは、広く世の中に「安全・安心・快適・便利」を届けるために、新しいものに対する拒否的な態度や、古いものに固執することなく、前進・進歩に対する強い意欲と信念を持つことを尊ぶ「現状打破の精神」を原点に、次の成長に向けた施策を打ち出されています。その内容とは何か、目指すセコムの未来の姿や、東京2020オリンピック・パラリンピックへの想いなどについて中山社長にお話を伺いました。

インタビュー

不透明なVUCA(ブーカ)の時代を、 全員経営で乗り越える。

セコム株式会社 中山泰男

平成28年に社長に就任されてからどのようなことに取り組まれていますか?

社長就任後、まず「これでいくよ!」と「社員満足を原点とする全員経営」の方針を社員に示しました。

現代は、VUCA(ブーカ)と呼ばれる不透明な時代を迎えています。そんな時代に経営スタイルはどうあるべきかと考えたときに、そのスタイルは二つあります。ひとつは「俺についてこい」というスタイル。例えて言うと、ボート競技のレガッタです。リーダーの掛け声のもと、なだらかな水面を目的地に向かって全員が一糸乱れずに漕いでいく。二つ目は、自分で考えて行動する「全員経営」のスタイル。これはラフティングです。レガッタと違って、激流の川を転覆せずに乗り切って目的地に向かわなければいけない。誰かの指示を待っていては転覆してしまうので、一人ひとりが自分の役割を心得て、変化に応じて迅速に対応していかなければなりません。

現代は、激動の時代だから、ラフティングのように、社員一人ひとりが主体性をもって、自分は何をすべきか考えて柔軟に行動することが重要で、それが私の考える「社員満足を原点とする全員経営」です。

※VUCA(ブーカ)
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)から頭文字を取って作られた造語で、現代の混沌とした経済環境を指す言葉として用いられている。

社長が語り続けることで、 社内に浸透する。

セコム株式会社 中山泰男

「社員満足を原点とする全員経営」は、どうやって社員に浸透させたのでしょうか?

私が力を入れたのは、語り続けることです。社員に何度も聞かせているのが石切り職人の話です。

村の三人の石切り職人に旅人が尋ねます。「何のために石を切り出しているのですか?」と。一人目は、「俺は食うためにやっている」と言う。これは手段の目的化です。二人目は「自分は村いちばんの石切り職人になるために、工夫しながら石を切り出している」。これは明確に目標があります。三人目は「教会を作るために石を切り出している。この石から教会が造られる。教会と言うのは村の文化が生まれる場所であり、自分はそこに貢献している」と答える。ここには明確で、より高い目的意識があります。「全員経営」でこの三人目の石切り職人を目指そうよ、と社員に話しかけています。

言葉で表現しても、一人ひとりの腹に落ちないと意味がない。そのために私は、何度も社員のいる場所に出向いて話をします。その際、同じことを何回も言うことが大変、無駄だと思ったらダメで、言葉の奥にある熱と想いを伝えるために、同じことを何回でも語り、組織に浸透させるようにしています。

全員経営となると、職場の雰囲気も大切になってきそうですが

全員経営では、上司部下や、部署などを越えて自由闊達なコミュニケーションを可能にするオープンな組織づくりが必要となっていきます。そのためにはまず言葉を変える必要があると考えて、「社内で飛び交う言葉を変えよう」を合言葉に、PPAP作戦というものを展開しています。PPAPの頭文字にそれぞれ意味があって、Positive(前向きな表現へ)、Passionate(実現したい想いを込めた表現へ)、Approval(互いに承認<いいね!>しよう)、Partner(パートナーとして話そう!部下も取引先もお客様もパートナー)を行動指針として活動しています。

PPAP作戦を展開することで、オープンな組織文化が定着すると、イノベーションが生まれやすくなります。イノベーションを単に「技術革新」と解釈しがちですがそれは大間違いで、既知物と別の既知物の組み合わせで新たな価値を生み出すことがイノベーションなのです。そのためにオープンな組織が不可欠ですが、逆に言うと、それさえできればイノベーションを生み出すことは容易です。

ちなみに「PPAP」と言うとピコ太郎さんを思い出すかもしれませんが、ピコ太郎さんも文字通りペンとパイナップルとアップルという既知物と既知物の組み合わせでイノベーションを起こしたとも言えますね。その面白さが皆様に受けたのではないでしょうか。

スポーツの感動は安全・安心の先にある。

事業の中で大切にしたいことは何ですか?

少し前、オリンピックでも活躍した体操の田中理恵さんと対談をした際に、彼女がこんなことを言ってくれました。「選手が精一杯頑張れるのはたくさんのお客さんが観に来て応援してくれるからですが、そのお客さんの安全・安心が守られていないと、私たちもそれが心配になって競技に集中できない。でも、セコムさんが守ってくれると思うと、高いパフォーマンスを発揮することができます」。その言葉に対して、私はひとつのキャッチフレーズを作ってお返しをしてみました。「スポーツの感動は安全・安心の先にある」。田中さんも、「そういうことですね」と頷いていらっしゃいました。そのとき、改めてセコムはやっぱり人々や社会の安全・安心を支える縁の下の力持ちであるべきだと思いました。日頃は気にもならないけれど、どんなところでも気づいたらセコムに守られている。そんな安心というサービスをこれからも絶やさず提供する会社であり続けなければと思っています。

オープンな企業文化をつくり、 未来の姿を描き出す。

セコム株式会社 中山泰男

2030年に向けたビジョンを発表されたようですが、どのようなものですか?

セコムは2017年に、「2030年に向けて社会にどういう形で貢献していくか」を示す「セコムグループ2030年ビジョン」を策定しました。その核となるのが「あんしんプラットフォーム」構想で、ここでは「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を」という明確なビジョンを示しています。

ただ、VUCAの時代を迎え、社会のニーズも複合化、多様化する中で、今後、セコムの力だけで、そのすべてのニーズにお応えすることはできません。そこで、想いを共にするパートナーの皆さんとともに、人々の暮らしや社会に安心を提供する社会インフラを整備していくことにしました。だからこそ、「あんしんプラットフォーム」なのです。その具体的な姿として、3軸思考と言うものを打ち出しています。「1.何を?(命・健康、財産、情報)」「2.何から?(事件・事故、サイバー犯罪、自然災害、病気・老化)」に対して「3.どうやって?(平時における“事前の備え”、有事における“事態の把握”、有事における“被害の最小化”、そして平常に戻す“事後の復旧”)」を明確にすることで、セコムが果たす役割、何を目指そうとしているのかを内外に明らかにしました。

これにより、これからセコムが何をやるか、どこに向かっていくのかが明確になって、社員や関係する人たちから「これいいね」「これやろう」と新しいイノベーションが次々と生まれていくことを期待しています。

2020年を、 恩返しの気持ちで臨みたい。

セコム株式会社 中山泰男

東京2020オリンピック・パラリンピックの警備にも携わるようですが、その意気込みを聞かせて下さい

セコムの創業は昭和37年。その2年後に開催された東京オリンピックで選手村の警備を受け持つことになったのです。それをきっかけに、セコムは大きく飛躍していきました。だから、私たちは、恩返しのつもりで東京2020年オリンピック・パラリンピックの警備に臨みたいと強く思っています。

大会招致の際、大会で必要な警備員は1万4,000人と言われていました。これは空前の規模です。日常の警備のお客様がある上に、このオリンピックセキュリティーが重なってきますから、警備員を集めるだけでも大変なこと。東京の首都機能を維持しながら、オリンピックを守りきるためにどうすべきかを考えたとき、数多くの警備会社も参画するオールジャパン体制が最適だと判断し、警備共同企業体(JV)方式で大会を支えていくことになりました。

警備業界は今、人手不足が深刻で、求人倍率でみると東京で約17倍、全国で7~8倍と高く、雇用が難しい分野となっています。東京2020年オリンピック・パラリンピックの警備を通じて、「警備ってこんなに社会に役立つ仕事なんだ」「かっこいい」と業界のブランド向上の機会になればと思っています。業界一丸となって大会の安全・安心を守り抜くことで、オリンピック・パラリンピックのレガシーとなるよう活動していく決意です。

日本経済を活性化させるプレーヤーを目指して転身。

日本銀行からセコムに転職されたのはなぜですか?

日銀の金融政策は、個別企業や業界ではなく、社会全体に影響を与える重要な役割を担っています。そう言うところに魅力を感じて入行しました。以来、日銀時代は「物価の安定」と「金融システムの安定」と言う日銀の二大使命のどちらにも深くかかわり、大分支店長や名古屋支店長も経験したのですが、退職に関しては名古屋支店勤務の経験が大きく影響しています。中部地方の様々な企業の社長と接する中で、気付かされたことがありました。日銀の仕事は金融にかかわるインフラ整備で、相撲で言えば力士のために土俵の整備をする役割です。一方、企業は相撲を取る力士で、彼らが日本経済を活性化させている第一線のプレーヤーであり主役であるということを痛感したのです。私もプレーヤーの一人になりたいと、元日本銀行総裁で、私が仕えたことがある三重野康さんに相談すると、三重野さんはセコム創業者の飯田亮と懇意な関係であったことから「セコムはどうだい?」と紹介して下さったのです。それが縁ですね。小さい頃から長嶋さんの大ファンだったということもあったかもしれませんが。

セコムに入社してみると、日銀とセコムに共通点があることが分かりました。どちらも、社会からの信頼をベースに成り立っているところです。日銀の金融政策に応じて企業が活動をコントロールすることで、経済全体が自己回転的にまわって日銀が望んでいる方向にいくわけです。ところが、「日銀の金融政策なんていい加減さ」と企業が信頼しなくなったら全く効果は出ません。一方、セコムの提供する安全・安心も目に見えず、失って初めて分かるものなので信頼がないと機能しません。第一、信頼がなければ、お客様から鍵を預かることはできませんね。

恩師との出会いが、 可能性の扉をひらく。

セコム株式会社 中山泰男

幼少期の経験で今に生きていることはありますか?

私は幼少時から好奇心の強い性格でした。そう言うところを受け止めてくれたのが、恩師の一人で、小学校3~4年生時代の担任だった大和田先生です。あるとき、大和田先生が私と数人の同級生に「調べたいことをまとめていらっしゃい」と言われ、まとめていくと今度は「それをみんなの前で発表しなさい」と言われたのです。それを実行してみると百科事典で調べたりすることや、人前で話すことがすごく楽しかったのです。今でも、何かをまとめたり、人前で説明することは得意なほうですが、そうした能力は大和田先生が鍛えてくれたのでしょうね。

見えない未来を信じろ。

セコム株式会社 中山泰男

若い人にアドバイスを贈るとすると、どのような言葉になりますか?

日本ハムファイターズの監督、栗山英樹さんの著書「育てる力」の中に「見えない未来を信じろ」という言葉があります。栗山監督と言えば、二刀流の大谷翔平選手を育てたことで知られています。これまでの野球界の常識からすると、二刀流なんてあり得ないことですから、大谷選手は栗山監督と出会わなかったらピッチャーかバッターのどちらかに絞らされ、メジャーリーグで今程の脚光を浴びることもなかったかもしれません。

その大谷選手の有名な話として、高校生のときに目標達成シートを作っていたことがあります。夢を叶えるために何が必要かをそのシートのマスに書き、そこに向けた取り組みを日々実践し、自分の信じた未来に向かって歩みを続けているとのことです。素晴らしいですね。

私は、そんな大谷選手の姿に共感を覚えています。未来は、過去の延長線上にはない。「見えないからこそ、自分を信じて前に突き進み、自己実現していこうよ」という想いを込めて、若者に「見えない未来を信じろ」というアドバイスを贈りたいと思います。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2018年5月

経歴

昭和51年3月

東京大学法学部第2類 卒業

昭和51年4月

日本銀行 入行

平成5年10月

同行 企画局政策広報課長

平成9年5月

同行 営業局金融課長

平成10年4月

同行 金融市場局金融市場課長

平成10年7月

同行 大分支店長

平成13年7月

同行 政策委員会室審議役

平成15年7月

同行 名古屋支店長

平成17年 7月

同行 政策委員会室長

平成19年 4月

同行 総務人事局

平成19年 5月

セコム株式会社入社 顧問

平成19年6月

同社 常務取締役就任

平成22年 1月

同社 常務取締役総務本部長

平成28年5月

同社 代表取締役社長 (現在)

セコム株式会社

株式会社文化放送

セコムは、昭和37年に日本で初めての警備保障会社として創業。昭和41年には日本で初めて企業向けにオンライン・セキュリティシステムを開発し、全国に基盤を築いてきました。昭和56年には、わが国初のホームセキュリティシステムを発売し、家庭市場を開拓。現在、国内は企業向けと家庭向けを合わせて約230万件、海外は19の国と地域に約84万件のサービスシステムを提供しています。

セコム株式会社
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前一丁目5番1号

※これより先は、「上場企業検索 ビッグカンパニー」へ遷移します。

トップページヘ戻る
ページトップへ