株式会社パロマ
代表取締役社長小林弘明

株式会社パロマ 小林弘明

金属製品

もう1回、
新しいパロマを作り直す

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はじめに

ガスコンロ、給湯器など家庭用及び業務用のガス機器の開発・製造・販売を手がける株式会社パロマ。国内のみならずグローバルに事業を展開し、製品は世界60ヵ国に届けられています。世界市場に向けた挑戦を続けながら、常に頭の片隅に「消費者は何を求めているのだろうか」という目線を大切にしていると語る社長の小林弘明さんに、創業家の社長としての歩み、これまでの取り組み、今後の目標などについてお話を伺いました。

インタビュー

入社時も、社長就任時も、 「やるしかない」という気持ちで

株式会社パロマ 小林弘明

パロマに入社されたときの様子や、社長に就任されたときの心境を教えて下さい。

パロマに入社してすぐに気付いたことは、私の座る席がどこにも用意されていなかったことです。実は、3代目の父も入社時に2代目の祖父に同じ手を使われたようですが、座る場所どころか所属する部署も決まっておらず、何をしていいかも分からない状態にされていました。そばにいた上司にお願いして空いている机を借り、しばらく身を潜めるように会社の資料を眺めたりしていました。社員の人たちからの「あの人何する人なの?」「何ができるの?」という興味津々の視線がとても恥ずかしく、気軽に社内を歩くことさえできませんでした。それでも2ヵ月くらい経つと、一つ二つと自分のやるべき仕事が明確になり、落ち着いて仕事と向き合えるようになっていきました。

社長に就任したのは、それから13年後の37歳のときです。社長交代は「そろそろ社長を退きたい」という父の意向でした。正式に会社からオファーを受けたとき、私は「3年くらい時間を頂けませんか」と返事をしました。当時の当社は販売と製造が別々の会社に分かれていて、営業を担当していた私は製造のことがよく理解できておらず不安があったからです。実際には、父の体調面も踏まえて早期に社長に就任しました。

子どもの頃から父や祖父から事業継承者と期待され、自分もそれ以外の選択肢はないと考えていましたので、入社時も、社長就任時も「やるしかない」という気持ちでした。

関連会社を統合し、 人と人の間の垣根を壊していく

株式会社パロマ 小林弘明

社長に就任されてから最も印象に残る取り組みを教えて下さい。

社長になってから6年後の平成23年、製造会社である「パロマ工業株式会社」と販売会社「株式会社パロマ」を合併したことが、一番強く心に残っています。両社の拠点は同じ敷地にあり、フロアが一緒だったりする部署もありましたが、お互いに壁があり何か問題があると責任の押し付け合いが始まっていました。

社長就任後、製品事故があったことから、何度も役員を集めて合宿を行ない「どうしてこの会社は社員を幸せにできないのか」「なぜ失敗するのか」について話し合いをしました。すると社内の課題はだいたい人間関係に起因していることが分かったのです。中でも、関連会社間での人間関係に問題があることが多く、当時は関連会社が何十社もあって相互連携もうまくいかずバラバラになっていました。ならばみんな一緒にしてしまおうと、一部の会社を除く国内のすべての会社を統合し、新たなパロマとして生まれ変わりました。

合併後、みんなで揃って1泊2日の温泉合宿に出かけ、みんなで風呂に入ったり、製販の垣根を壊す会議を行なったりして相互の気持ちを理解していきました。さらに、社内向け情報発信の機会を増やし、特に社内報ではできる限り社員を取り上げる施策を展開することで、人と人の距離が縮まっていきました。それでも時々、部門間の気持ちのズレから生まれる落とし穴もありますが、一歩ずつ「幸せな気持ちで働ける会社」に近付いているのではないかと考えています。

人生の節目で心に残る、 父のアドバイス

株式会社パロマ 小林弘明

3代目社長でもあるお父様はどのような存在ですか。

父は、仕事では社長とエンジニアという二つの顔を持っていました。社長としては会社を何とかしなければという強い信念を持っていましたが、同時にエンジニアとしても「いい製品を作るんだ」という気持ちは他の誰よりも強かったと思います。そんな父ですから、家の中でも黙って仕事のアイデアを練っていることが多かったように記憶していますが、それでも時折、私のことを思って心に残る話をしてくれました。

父が小学生の頃の話もそのひとつです。「私の通知表に『小さな殻に閉じこもっていてはダメだよ』と先生のコメントが書かれてあった。それ以来、私はそれを意識して生きてきたから、あなたも殻に閉じこもらないよう気を付けなさいよ」と諭すように語ってくれました。それから数年後、私が社会人になってからは「パロマだけが正しい。自分のやったことが正解だ。そういう意識は非常に危険な考え方じゃないかな」と父から指摘されたことがあって、あとから思うと「小さい殻に閉じこもらない」というのは広い視野で世の中を見ることが大切で、色々な声に耳を塞いでいてはダメだよ、という意味ではなかったのかと思います。

他にも、大学受験や社会人としての一歩を踏み出したときなど人生の節目で、父は心に残るアドバイスを贈ってくれました。私は父とは全く違うタイプの人間だとずっと思っていたのですが、最近になって、自分の発言がどこか父に似ているなと感じることが多くなっています。そう思うと、父が私の人生の、そして経営者として一番の師なのかもしれません。

「悩むより前に進もう」と 若い人の背中を押したい

株式会社パロマ 小林弘明

「小さな殻に閉じこもらず」は人生の様々なシーンで使える言葉のようですが。

結婚にだって言えることです。私の結婚の話で恐縮ですが、北海道に出張したとき、妻と知り合いました。すぐに意気投合し、お互いに結婚する意志を固めていました。ところが、両方の親が結婚に反対でした。妻の両親は難しそうな家柄に嫁がせるのはどうかと言い、私の父も反対だと言っていました。それでも、妻は大きなバッグひとつ抱えて名古屋にやってきて、その2週間後には入籍して二人でアパートを借り、住むようになりました。その後、まだ生活が不安定な時期に、長男が誕生しました。それでも楽しく毎日を過ごし、温かな家庭を築いていくことができました。

結婚と同じモノサシで計ることはできませんが、仕事でも趣味でも何でも新しい世界に足を踏み入れるのは楽しいことだと思います。私たちは、世の中の閉塞感やネガティブなニュースに惑わされて、前に進むことにためらいがちです。しかし、勇気を出して新しい世界に向かって挑戦してしまえば、大したことないと思えることが意外に多いのではないでしょうか。

若い人たちにそんなふうに大胆に生きてもらいたいと思っているのですが、私がそのチャンスをまだ十分に与えることができていないのではないかと反省しています。これからは「もっと前に行きなよ」と好奇心あふれる若い人の背中を押して、これまで見たことのない新しい世界に誘っていきたいと思っています。

社員一人ひとりが さらに活躍できる力を付けるための サポートこそが大切

株式会社パロマ 小林弘明

全国に工場を展開していますが、製造拠点の統合や集約は考えていませんか。

国内の工場は、東海地区の他、九州、北海道を含め全国8ヵ所設けています。昨今、製造業は、設備・人・モノの統合による生産効率の追求や、物流コスト削減のニーズから拠点集約の取り組みが活発になってきております。しかし、当社では、品質を保つためにもできる限り自社工場で製造したいという思いがあります。また、災害が発生した際にも、生活必需品であるガス機器の供給をストップさせないために、リスクヘッジの観点からも8カ所による「分散体制」を維持しています。

当社のある工場は、手作業で組み付けるという仕事が多かったのですが、それだけでは人間本来の価値は発揮できず、結局はやりがいを見出せなかったりして働く人が行き詰まってくるのではないかと危惧していました。

そこで、工場で働く人にこれまでの仕事以外にも色々な知識や技術を吸収してもらい、これまで以上に活躍できる人材になってもらえるような取り組みを進めたのです。

そこでは、多様な技術に関わることができる仕組みを作るとか、資格を取得したい人を応援するとか、チームワークを発揮して新しいことにチャレンジしていく気運を高めていくとか、そんな活動に力を注いでいました。結果、男女問わず責任者として活躍する人材が育っていきました。

そうして、どこでも生きていけるような力を身に付けた人材が揃っていたら、そもそも工場を閉鎖する必要もなくなり、どんな仕事でもこなせる工場になってくるはずです。

そういう人の価値を引き出すような発想で工場を捉えていかないと、これから国内でのものづくりは立ち行かなくなるのではないかと思っています。

大切なのは、褒められたい、 認められたいという気持ち

株式会社パロマ 小林弘明

時代が変わっても、これだけは失いたくないものを教えて下さい。

私たちのガス機器は、暮らしに密接にかかわっているため、日々、私たちのもとにユーザーの方々からの色々な反応が届きます。様々なご意見を頂く中で、「これ良かったよ」「いいね!」と褒めて頂くことがあります。「何を以て仕事の喜びを感じますか?」と問われたら、まず純粋に世の中から褒められたい。「これ良かったよ」と言って頂くことだと思っています。そこには金銭だけではない、私たちがガス機器を生業にして生きている意味みたいなことを実感することができます。「褒められたい」、「認められたい」そして「人の役に立ちたい」という心の一番根っこにある貪欲さこそが、私たちの仕事の原点だと思っています。

もちろんそれは製品のことだけではなく、私たちの様々な活動に対しても言えること。企業として恥ずかしくない活動をしているか。製品の安全に対する取り組みは十分なのか。それを会社に身を置く人間だけで検証しようとすると、どうしても社内の都合が優先され、正しい判断ができなくなってしまいます。

私の場合、そうした製品以外のところで悩んだりすると、まず身近な存在である妻や母ならどう評価するだろうか、理解してもらえるだろうか、と想像してみることがあります。妻は、消費者として厳しい判断基準を持ち、直接的に会社にかかわっていないことから客観的な意見を聞くことができます。母は私が二十歳のときに他界していますので、あくまでも想像の中ですが、自分の判断基準として「母に、報告して恥ずかしくないか」と問うています。

社会が求めていることと企業が発信することにズレが生じてくると褒められません。そこをしっかりとチェックすることも、「いいね!」と褒めてもらうための大事なプロセスだと捉えています。

社会貢献活動は、 “縁”をつなぐ活動

株式会社パロマ 小林弘明

社会貢献活動を活発に行なっていらっしゃいますが、その理由や思いを教えて下さい。

平成22年、企業活動を通じて得た利益をもとに科学技術振興を支援しようと、財団法人パロマ環境技術開発財団を設立したことが社会貢献活動の始まりです。その後、東日本大震災の復興支援や名古屋市とのネーミングライツ契約で名古屋市瑞穂運動場の愛称を「パロマ瑞穂スポーツパーク」として頂いたり、東山動植物園の開園80周年記念行事の協賛などを行なってきましたが、こうした活動を通じて知り合った人たちとの交流をしているうちに、私は子どもやシングルマザーの人たちへの支援を考えるようになっていました。そのことをある人に相談し、その方のお友だちを紹介してもらったことで、計画が具体化していきました。そして、平成29年12月、「小林奨学財団」を立ち上げ、愛知県内に住むひとり親家庭を対象に「学業資金支援」を行なう取り組みを開始することになりました。

この活動はまだスタートしたばかりで、支給できる金額もわずかなものですが、子どもたちと接していると学びたいという情熱がひしひしと伝わってきて、すごく手ごたえを感じています。きっと将来、社会が求める分野で活躍してくれるに違いないと思っています。

私たち自身も事業を通じて社会から得た利益の一部を社会に還元することが、大きな喜びとなり、明日も頑張ろうという活力を生み出しています。

こうした社会貢献活動は、何より思いを共有した人との「縁」の繋がりが一番大切だと考えていますので、これからもたくさんの人との「縁」を繋いで実り多い活動へと発展させていきたいと思っています。

社員一人ひとりの当事者意識を重ねて、 ガス機器の安全・安心を作る

製品の安全対策に力を注いでいらっしゃいますが、どのような考えで取り組んでいますか。

お客様は、信頼してガス機器を購入頂いているわけですから、それを裏切らないということを大前提に安全・安心にかかわる様々な活動を進めてきました。近年、特に力を入れてきたことは、お客様から頂いたお声を製品づくりの基礎情報として活かしていくことです。そのために、サービスコールセンターに寄せられたお客様の声(VOC:Voice Of Customer)や、製品に梱包されるアンケートはがきの回答などを集約したり、社内外から「ヒヤリ」「ハット」体験の情報を収集しています。

製品というハード面だけでなく、ガス機器をお使いになる消費者の方に向けて、「こういった事故がありましたので注意して下さい。」とか事故の事例なども紹介しながら注意喚起をしたり、ガス機器を使用する前に注意して頂きたいことを伝えることも積極的に行っています。冊子では「ガスコンロなどのガス機器を安全・安心にお使い頂くために」をお配りし、企業ホームページの中では「安全のお知らせ」で発信していますので、ご関心のある方はぜひ覗いて見て頂きたいと思います。

こうした安全・安心にかかわるすべての活動の根底にあるのは、社員一人ひとりの当事者意識ではないかと思っています。つまり、「自分が消費者だったらどう思う?」「家族が使うガス機器だったらどう思う?」という視点がすごく大事なことで、その気持ちがあれば「それは、うちの部署とは関係ないから」という発想にはならないでしょう。どこで起きた問題でも自分事として捉えて、情報を共有し、問題の原因を探り、解決に導こうとする姿勢を大切にしなければ、より安全により快適にガス機器をお使い頂くことにつなげていくことはできません。

もう1回、 新しいパロマを作り直す

株式会社パロマ 小林弘明

これから力を入れて取り組もうとしていることはありますか。

日本の社会が大きな転換期を迎え、「この国の企業はこれからどう生きていけばいいのだろう」と悩みを抱える企業が多い中で、「パロマはどうやって生きていけばいいのだろう」と考えたとき、少なくともこれまでの延長線上に未来はないということは明らかだと実感しています。

平成19年には製品事故の問題があり、そこをスタートラインとして「新しいパロマを作り直す」と宣言し、信頼を取り戻すための活動を続けてきました。あれから十数年が経過した今、もう1回「新しいパロマを作り直す」ことが必要ではないかと考えています。

どう作り直すのかと言えば、誰が見ても会社の中が見通せるオープンな状態にしておくことだと思っています。元々当社は創業から100年以上の歴史がありますが、その間、社長に就任した者は私を含めて4人しかいません。いずれも創業家で、小林姓の者が社長を務めてきました。つまり、この会社に就職した人は、誰一人として社長になっていないわけです。

総力を結集して、話し合って決めることが当たり前という企業文化をつくっていきたいと思います。いわば社員全員が経営者という意識で、新しいパロマを作る。そんな改革に取り組んでいければ、私たちが生きてゆく道は拓けると信じています。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2018年7月

経歴

昭和43年

8月5日生まれ

平成4年3月

青山学院大学経営学部 卒業

平成4年4月

株式会社パロマ 入社

平成9年5月

株式会社パロマ 取締役  就任

平成17年9月

株式会社パロマ 代表取締役社長 就任

株式会社パロマ

株式会社パロマ 小林弘明

お客様の安全に配慮した製品開発を基本に、主力製品のガスビルドインコンロ、ガステーブルコンロ、ガス給湯器など、家庭用及び業務用のガス機器の開発・製造・販売を手がけ、これらの製品を通じて安全・安心で快適な生活を提供しています。

株式会社パロマ
〒467-8585
名古屋市瑞穂区桃園町6番23号

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