株式会社文化放送
代表取締役社長上口 宏

代表取締役社長 上口宏

マスコミ/ラジオ局

足りないコミュニケーションを、ラジオが満たす時代へ

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はじめに

昭和27年に開局して以来、関東広域にリスナー目線での番組を送り届けているラジオ局、「文化放送」。社長を務めるのは、同局での長い営業経験から、人とのコミュニケーションを重視した戦略を次々と打ち出している上口宏さん。インターネットが台頭し、メディアのあり方が問われる今、ラジオ局として取り組むべき事柄、大切にしたい思いについてお話を伺いました。

インタビュー

ネットデータを駆使し 個人に届く番組作りを

株式会社文化放送 上口宏

社長就任後、社内で重視する取り組みについて教えて下さい。

今の時代は「ダイバーシティ」と言われるように、個人の方々の趣味や嗜好が多様化しています。それはSNSやインターネットの技術が日々進歩する中、企業や個人がリアルタイムに情報を発信する時代だからです。この流れに対応するため、4大マスメディアと言われるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌がインターネットにどう向き合うか…、「ネット・デジタル・リテラシー」がキーワードになると私は考えています。

つまり、インターネット上で展開されるデータをうまく駆使しながら、いろいろな取り組みをする必要があるということ。我が社では、FM放送の周波数でAMラジオを放送する「ワイドFM」や、インターネット配信「radiko(ラジコ)」などの新しいサービスで番組を提供しています。さらに最近ではradikoに新機能が加わり、時間差で番組を聴いたり、おもしろいと思った番組の音声をそのままSNSに乗せて友達に伝えられるようになりました。このように聴取者といろいろな接点を作り、拡散することが今後より重要になるとみて整備を重ねています。

もうひとつ、若い人たちに聴いてもらえるようコンテンツ自体にも変化を加えました。例えば、「A&G」というアニメとゲームを主軸とした新しい分野を作り、声優さんと番組作りをしています。これは非常に大きく成長し、新しい領域も形成しており、イベントの開催やグッズの販売などで、事業化やマネタイズもどんどん進んでいます。

我々は大きな目標として、顧客第一主義を掲げ、「ニッチ戦略」・「セグメンテーション理論」を続けてきました。今の人たちは、自分が興味を持っているものは見たり、読んだり、聞いたりしますが、興味のないものに関してはシャットアウトしてしまいます。一人でも多くのリスナーに番組や企画を送り届けるため、我々のターゲットがどういう方か着実に捉え、愛して頂く番組作りをする必要がある、というのが私の思うところです。

足りないコミュニケーションを、 ラジオが満たす時代へ

株式会社文化放送 上口宏

新しい方向性を打ち出す過程には、社内外でどのよう な変化があったと思われますか。

社会はこの10年間で大きく変わったと思っています。前任の社長が就任した10年前は、インターネットの影響が今程クローズアップされる時代ではありませんでした。その時代は、大量消費、大量生産の時代で、安く売れば商売が成立していたと思います。しかし、安いだけでは売れなくなっている今の時代が到来しました。欲しいものは手に入り、インターネット上でコミュニケーションがこと足りていると言う人もいますが、それだけに、必要なもの、欲しいものが見付からないという状況が起きていると思います。

そこで今は、問題や課題を提案していく必要があるというのが私の考えです。例えば、ネスカフェさんのコーヒーマシン「アンバサダー」という商品がいい例です。社内でのコミュニケーションが不足しがちな今、アンバサダーをオフィスに置いてもらうことで、みなさんがそこに行き、会話が弾み、コーヒーを飲む機会が増えるという結果になりました。コーヒーをいい品質で提供するビジネスで成立していた同社が、今まで意識していないシチュエーションを提案し、提供したからこそ、成功したと思うのです。同じように考えると、ラジオが作る番組もコミュニケーションを重視する方向が必要だと思っています。

社員一人一人に向き合い 自分から働きかけを

ラジオ

社長として、社内ではどのようにコミュニケーションを円滑にしていますか。

社長に就任する前、私は代表権のある専務という立場でしたが、社長は今までと全く違うなと思いました。社内の一人一人の気持ちを考えることが大きな使命だと思い、日常的に人を大事にしようと考えたのです。そのため、私から社員に声をかけることもありますし、現場でも常に周りと濃密な関係を作るように心がけています。

例えば、現場の社員は、自分のやることを本当に上司や社長が見ているのか、評価してくれているのか、多少なりとも心配する傾向があるのではないかと思ったのです。私もそうでしたから。それなら、私の立場から何か褒めてやりたいと思い、管理職を通じてミーティングで決まったことを伝えてもらうようにしました。現場の社員に「部長から聞いたけど、よくやったじゃないか」と話すと、現場の社員も「部長が社長にきちんと話している」と分かり、理解してもらいやすくなります。

昔は徒弟制度のような形で、自分で勉強したり先輩の技術を盗んだりしていましたが、今はそういう時代ではありません。仕事はシステム化し、効率的になったと言われますが、まだ課題があるのではないかと。携帯電話・SNSなどで行動は全部分かる反面、人との直の関係性はだんだん薄くなっているように見えます。だからこそ、言葉やコミュニケーションを重要視するようにしています。

自分がアクションを起こさないと、相手も起こしません。相手を嫌いになったら、向こうも嫌いになるのも同様。人にとって、言葉やコミュニケーションとは、非常に分かりやすいアプローチの方法なのではないかと思います。

自分が考えていることを社員すべてに分かってもらうのは難しいことだと思いますが、私の言っていることをひとつでも理解してもらい、社内が同じ方向を向き、自分のやるべきことのプラスアルファとして考えてもらえれば、それだけで組織全体が活性化され、大きな力になるのではないでしょうか。社長は最終判断をする立場でもあるので、孤独でもありますし、結果に対する全責任を負う緊張感もありますが、同時にやりがいもあります。

自分なりの価値を磨き 公平な判断に

株式会社文化放送 上口宏

社長に就任後、心掛けている考え方や習慣はありますか。

私は長い営業職時代に、自分の独りよがりでは物事は進まないということを学んできました。お客様の気持ちやニーズを自分の中で咀嚼し、公平に、バランスを考えてジャッジしなくてはいけないのではないかと。また、営業ではいろいろな人との接点があり、その中で自分自身、幾分なりとも成長することができました。今でもできるだけ外に出ていろいろな方とお会いして人脈を作り、経験を積むことで、自分の考えをあらためて見つめ直す機会を得ています。

先程顧客第一主義と言いましたが、我々にとって顧客である、「リスナー」・「クライアント」・「エージェント」。その他にも、大勢のステークホルダーと言われる方々、すべてのニーズに向き合うとき、自分なりの価値尺度が本当に今の時代に合っているのか、常に自問自答していないと、うまく判断できないと考えています。

ですから、例えば通勤電車の中でも「radiko」を聴きながら新聞を読み、顧客である「リスナー」の方々がどのような行動をされているか、観察させて頂くことによって、その判断が少しでも時代にフィットするように努めています。

営業での出会いや パーソナリティとの縁を財産に

株式会社文化放送 上口宏

これまでで印象的だった言葉や出会いはありますか。

出版社の宣伝の方が、雑誌に関して飛行機の操縦をたとえ話にされていました。物を浮上させていくとき、操縦桿をちょっと引くだけで上昇気流に乗り、上昇速度になっていきます。下降局面になると、操縦桿を引くのは二倍、三倍の力が必要になると。つまり、上昇気流に乗っているときは、宣伝予算を少しかけるだけで事業は浮上します。でも、下降局面だと二倍、三倍のお金をかけないと元に戻りません。我々の業界でも、風を読み、局面を考えないと浮上するタイミングを失うことがあるので、大変興味深い話だと思いました。

以前から、何かのご縁で始まったお付き合いは続くものだと思っていたのですが、社長に就任したとき、若いころ営業職としてお付き合いのあった方から、お祝いに広告のご提供を頂き、共に苦労しながら仕事を達成させて頂いた方だったので、営業冥利に尽きると思いました。番組のご出演者にも恵まれており、伊東四朗さんは、「てんぷくトリオ」(※昭和36~48年に活動)の時代からご登場頂いています。その他にも、武田鉄矢さん、立川志の輔さん、小倉智昭さんや弘兼憲史さんのように、長い間パーソナリティを務めて頂き今も番組に限らず深いお付き合いをさせて頂いている方が大勢おられます。これは、ラジオ局としてたいへん恵まれたことだと思いますし、私個人としてどう引き継いでいくかが使命だと考えています。

個人の生活に合わせた番組を

株式会社文化放送 上口宏

視聴者へ、おすすめのラジオの聞き方や番組を教えて下さい。

ラジオを聴くことは、イマジネーションを働かせ、脳を活性化させます。毎日24時間、できたら全部の番組を聴いて欲しいというのが率直な私の希望です。番組は、朝は通勤される方や家にいる方、昼は働いている方、夜は若い方、土日は行楽に行く方やのんびりする方と、ターゲットを変えているので、それぞれの生活・シチュエーションの中で、自由な時間に、気に入った番組を聴いて頂ければと思います。

私自身が今一番気になっているのは、通勤時間帯にあるタケ小山さんの番組「The News Masters TOKYO」(※毎週月~金曜7~9時放送中)です。タケ小山さんは、アメリカに留学してゴルフマネジメントを勉強された方。スポーツ関係に非常に詳しく、ビジネスで参考になる話も多いので、聴いて頂ければお役に立つのではないかと。私の場合、社長室に閉じこもっていないで外に出て行くよう、日頃から心掛けているので、そういうときにはポータブルラジオやスマートフォン等、持ち歩いて聴けるラジオを活用しています。

「A&Gゾーン」では、「こむちゃっとカウントダウン」(※毎週土曜23~24時放送中)が入門編としてお勧めです。また、もともとA&Gは深夜帯に編成をしていましたが、2017年4月、日曜日のデイタイムに、声優さんが出演する新しい2時間の生ワイド番組「A&Gリクエストアワー 阿澄佳奈のキミまち!」(※日曜11~13時に放送中)を初めて編成しました。こちらも好評で、「radiko」で聴いて頂いている方や、地方のリスナーから多くの反響がありました。この時間帯はA&G番組の成立が難しいという意見もありましたが、自分たちの思っている経験則をリセットしないと飛躍できませんからね。

「トランスフォーム」で 1,000日間の成長へ

株式会社文化放送 上口宏

今後の抱負を教えて下さい。

アメリカの大統領は「チェンジ」と言いましたが、私はすでにあるものを変化させる「トランスフォーム」という言葉を使いたいと思います。既存のものでも、ステージや見方を変えれば、新しい世界が見えてくるかと。バスケットボールの世界では、サッカー界で活躍している川淵三郎さんが、分裂していた2つのリーグを統合し、Bリーグを発表しました。そのバリューに「前例を笑え!常識を壊せ!限界を超えろ!」とあります。これは新しい世界を作るうえで参考になる、いい言葉だと思いました。

今後、社長就任から3年間で新たな答えを見付ける「1,000日プラン」を明示していく心積もりです。その答えを見付けるにあたり、経営理念や経営ビジョンをもとにした戦略を打ち出し、戦略を現場に落とし込む組織改編をしました。こういった構想を実現していき、「トランスフォーム」の形で、違ったステージに向かって成長する上昇気流になるよう、頑張ろうと思います。

インタビュー:2017年11月

経歴

昭和28年

東京都生まれ

昭和50年

明治大学卒業

文化放送入社

 同社 経理部長

 同社 営業局長

平成28年

代表取締役専務放送事業局長

平成29年6月

代表取締役就任

株式会社文化放送

株式会社文化放送

お聴き頂いている皆様お一人おひとりに愛される存在、「あなたのマイメディア 文化放送」であり続けるため、これからも一人でも多くの方に喜んで頂ける番組を世に送り出すという揺るぎない理念を胸に、創造と挑戦の道を歩んで参ります。

株式会社文化放送
〒105-8002
東京都港区浜松町一丁目31番

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