日東工業株式会社
取締役社長 CEO佐々木 拓郎

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

電気機器

「知の探索」によるイノベーションで活発な企業を作り出したい

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はじめに

1948年に設立して以来、供給された電気を必要箇所に分配する「分電盤」や電気機器を保護する鉄箱である「キャビネット」の製造・販売を手掛ける日東工業。銀行員から製造業という異業種に転身した佐々木拓郎氏は、自身の経験を活かして老舗企業の経営に新しい風を起こしています。そんな佐々木氏の、経営イノベーションにかける思いについてお話を伺います。

インタビュー

銀行員から製造業への転身 老舗企業の成長と拡大を促す

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

もともと銀行に勤めていたそうですが、当時から製造業とのかかわりはあったのですか。

銀行員時代に日東工業とのかかわりはありませんでしたが、製造業に向けた営業の担当経験もありましたので、社外からみた製造業の経営についてはある程度理解していたつもりでした。ただ、中に入って働くのはもちろん初めてで、外から見るのと中で働くのではだいぶ違うと感じました。日東工業自体も、金融機関の人間が外から入ってくるのが初めてだったので、物珍しげに色々聞かれました。入社後は、まず営業本部に配属されて日東工業の製品や会社の構造を学び、会社に慣れたところで経営企画室に異動。

ビジネスモデルはできあがっていて、経営企画室はもともと少人数で対応していましたが、当時の経営陣もこのままで良いのかと思っていたのだと思います。

「個」から「グループ」へ 水平に広がる拡大を目指して

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

M&Aによる企業の拡大はいつ頃から考えていたのでしょうか。

経営企画室に異動してからは、事業領域の拡大をどうすればできるかが課題であり、M&Aも選択肢のひとつとして常に頭の中にありました。携わった中で大きな転機となったのが、2013年のサンテレホン株式会社の買収。日東工業は分電盤とキャビネットなどの部材が事業の中心ですが、情報通信系のシステムラックなどの部材を挑戦的なICTという新しい分野の事業として展開していました。サンテレホンは情報通信系の部材商社として圧倒的シェアを誇っていた会社で、日東工業の製品はもちろん、他社の部材も扱っていました。日東工業製品だけを販売するための垂直統合ではなく、当該事業分野でのサンテレホンの成長を期待しています。また、同社はかつて東証一部にも上場しており、相応のプレゼンスがあることから日東工業としても大きな転機となりました。現在、会社として掲げているのが、「日東工業単体」から「日東工業グループへ」というコンセプト。日東工業で働いている人たちにとっては、“日々の業務”はそこまで大きく変化はしていないと思いますが、働く会社への“感覚”という面では、単体企業の感覚から、国内外を含めたグローバルなグループ企業という感覚へと変わり始めていると思います。

「ヒトゴト」にならない 社員が主体的に発案できる会社へ

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

社長就任後に力を入れたことはなんですか。

前社長の頃からスタートしていたのですが、精力的に取り組んだのは、中期経営計画の作成です。以前は中期経営計画がなく、経営方針を1年ごとに変更していました。しかし、経営ビジョンの明確化のためには中期経営計画は絶対に必要です。私は経営企画室所属として、初年度の中期経営計画策定から参加しています。当初は作成の流れについて従来のスタイルを踏襲したところ、作成に参加した役員や社長しか興味のない形式的な計画書ができあがり、社員たちにとっては「ヒトゴト」な中期経営計画になっていました。これでは、目標に向かって社員たちが考えて行動して、自身を振り返るような中期経営計画の本来の動きが生まれません。社長就任後に発表した今回の中期経営計画は、社員を巻き込み「フェーズ0」から作っていくというコンセプトで策定。これは、現在の経営企画統括部のメンバーのアイデアで、普通に作るのでは「ヒトゴト」になってしまうので、「フェーズ0」という議論の場を設けて個別戦略を立案。戦略ごとに社員の責任者を決めて中期経営計画の作成に参加してもらい、議論やフィードバックを重ねながら“自分たちで作った”経営戦略を完成させました。現在、2020年度中期経営計画のなかばですが、社員たちによる自発的な振り返りが起き始めています。普通の会社からすると当たり前かもしれませんが、中期経営計画を柱とした、数年単位での経営が行なわれるようになりました。

「知の深化」に特化した企業から 「知の探索」ができる企業に

日東工業株式会社 内観

これから目指す会社の姿があれば教えてください。

柔軟性や広い視野の持った人材をもっと生み出していけるような会社にしていきたいと考えています。以前は、営業職に部署間をまたぐような異動はほとんどなく、入社後最初に配属された営業所一筋で、営業所長になるなんてこともありました。開発部門においても、ブレーカーの開発者とキャビネットの開発者が同じフロアで仕事をしていても、互いの業務内容はまったくわからないという状況。人と人の交流があまりに乏しい風潮が当時の日東工業にはありました。イノベーションは「知の深化」と「知の探索」の2つが組み合わさって初めて起きるものだと言われます。我々の組織では、業務の熟練度を上げて専門性を持った人材を育てる「知の深化」が基本的に優先されてきました。もちろん専門性をもった人材も大切ですが、それにプラスして、これから新規事業においてマネジメントができる人材を育てる「知の探索」にも力を入れる必要があります。幸いグループ会社も増えてきたので、部門をまたぐ異動の活発化や関連会社専属の部門の設立など、柔軟性や広い視野を育てるための土壌は整いつつあると感じています。

見えない先を予測しながら 経営の舵を切っていきたい

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

会社のトップとして会社の今後の動向はどのように考えているのでしょうか。

今は東京オリンピック・パラリンピックに関する新設や、古い社会インフラをリニューアルする需要が多く、業界としては好調です。しかし、中長期的に見ると業界の行く末は読めません。今後、少子高齢化が進んでいくので工事の数は確実に減少していき、製品の需要も減っていくと考えられます。一方で、需要拡大の可能性も0ではありません。現在、我々の主力製品である規定のサイズで量産した標準キャビネットの市場は約600億円と思われます(日東工業推定値)。しかし、キャビネットには標準品(サイズ限定)以外のカスタム品が数多くあり、その市場はまた別にあります。日本のユーザーは、キャビネットに対して標準キャビネットよりも、ジャストフィットのサイズで取り付けたいとオーダーする形が主流。そのオーダー品は、大多数が小規模な板金工場で作られています。少子高齢化が進めば、後継者問題などで、オーダー品製造の担い手の減少も予想され、代替品として標準キャビネットに脚光があたる可能性もあります。物事はプラス面とマイナス面があり、どちらに転ぶかは誰にもわかりません。先をうまく予測しながら経営の舵を切っていきたいと考えています。

ポジティブでいることが人生のチャンスを掴むヒント

日東工業株式会社 佐々木 拓郎

最後に日本の今後を担う若いビジネスパーソンの方々にメッセージをお願いします。

私は、常に「ネガティブ」よりも「ポジティブ」に物事を捉えることを意識しています。ネガティブな思考のときと、ポジティブな思考のときでは世界の見え方や広がり方がまったく違いますので、若い方にはいつでもポジティブでいて、そこから見えてくるチャンスやヒントを大切にしてほしいです。個人的には、今の若者のほうが僕らの若い頃よりもアグレッシブだと思っています。若いアスリートは日本人でも世界的に通用するようになってきました。それは、若い頃から世界に飛び出して挑戦をしたり、外国人とコミュニケーションを取ることができているからだと思います。ビジネスの世界でも、学生のうちからスタートアップ企業を起業することが普通になってきました。そういう意味では、今の若者の方が私たちの頃よりもバイタリティーに溢れていると思います。ただ、我々の会社に入社してくる社員はどちらかというと安定志向。若手社員には、挑戦をしてほしいと思っています。今後は企業と社会のかかわり方、例えば今話題の「SDGs(エスディージーズ):持続可能な開発目標」を企業としてどうやって関係させるかなど、未来を担う若手社員にはいろんな方向性からの課題が出てきます。一概には言えませんが、未来は自分で考えて自分で切り開いていくしかありません。そのためには若いうちにいろいろ挑戦をして、様々な観点のインプットがあったほうが、将来の選択肢は確実に広がります。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2019年7月

経歴

昭和31年5月

東京都に生まれる

昭和54年3月

京都大学法学部卒業

昭和54年4月

株式会社日本興業銀行入行

平成16年4月

株式会社みずほコーポレート銀行 関西金融法人部長

平成19年3月

日東工業株式会社入社 販売管理部長

平成19年6月

同社 経営企画室長

平成20年3月

同社 東京支店長

平成20年6月

同社 執行役員

平成21年3月

同社 執行役員 総務部長

平成21年6月

同社 取締役

平成21年10月

同社 取締役 営業本部副本部長

平成24年3月

同社 取締役 生産本部副本部長

平成24年6月

同社 常務取締役 海外本部長

平成26年6月

同社 取締役社長 COO(最高執行責任者)

平成31年4月

同社 取締役社長 CEO(最高経営責任者/現任)

日東工業株式会社

日東工業株式会社 外観

1948年の設立以来、電気設備や機器の開発・ご提案を通じて電気や情報のインフラを様々な形でサポートしています。環境問題や情報の高度化などの現代社会の課題に対してニーズを先取りし、いち早く開発・製品化に取り組むことで、新しい商品やサービスをご提案していきます。

日東工業株式会社
〒480-1189
愛知県長久手市蟹原2201番地

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