一般社団法人
日本甲冑武具研究保存会

会長 永田 仁志

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

刀剣・甲冑

甲冑(鎧兜)の魅力は、
当時の最先端の技術が結集されているところ

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はじめに

今回のリーダーは、一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会 会長の永田仁志さん。
1961年に創設された日本甲冑武具研究保存会は、甲冑(鎧兜)を中心に、馬具陣羽織・旗幟・指揮具など武具全般を対象にした研究と、後世に伝えるための保存活動を行なっています。永田会長が甲冑(鎧兜)に興味を持ったきっかけや、保存会の活動・今後取り組んでいきたいことなどについてお話頂きました。

インタビュー

フランス大使館で働いたことで、 日本の歴史や文化を見つめ直した

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

甲冑(鎧兜)武具にご興味を持ったきっかけを教えて下さい。

小さい頃から歴史に興味がありましたが、大学ではフランス語を勉強するなど、一時期は日本より外国に興味を持ち、影響を受けていました。
大学卒業後は某ホテルのフロントで働きつつ、フランス人の調理スタッフをたどたどしいフランス語でお世話したりしました。それがきっかけで、フランス大使館で働かないかと声がかかり、大使館の経済部へ転職することになります。
そこで仕事に対する姿勢や考え方などにカルチャーショックを受けたのですが、仕事以外の日常会話でもショックだったことがありました。フランス人が日本の文化や歴史をいろいろ聞いてくるのですが、説明することができなかったのです。自分の国のことなのにと思いました。
そんなとき、ふと東京国立博物館へ寄ってみたら、ちょうど日本の大甲冑展がやっていたのです。そのときに鎧のかっこよさに魅せられて、それから鎧や歴史について改めて勉強してみようと思ったことがきっかけです。28歳のときでした。

日本甲冑武具研究保存会への入会。 熱心さを買われ、会長へ

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

日本甲冑武具研究保存会には、どのようにかかわったのですか?

私の実家は、祖父の代から特定郵便局(地域に密着した、小規模の郵便局)をやっています。父が早くに倒れたので30歳で群馬県の実家へ戻り継いで、3代目の郵便局長として62歳まで務めました。
そこに務めているときに日本甲冑武具研究保存会というものがあることを知り、入会しておりました。

しかし、誰かと語り合いたいと思うものの、周囲にはなかなか同好の士が見つからず、定期的に発行される保存会の会誌を見ている日々でしたが、あるとき一念発起して東京の定例会に出席したのです。
そうしたら知り合いができて、その後は月に一度の定例会に時間を作って出席するようになりました。それを繰り返すうちに、熱心だから保存会の仕事をやってほしいと声を掛けられたのです。
私は趣味の世界から入ってきたので、そんな器ではないと申し上げたのですが、理事をやらせて頂き、6年前に前会長が高齢で引退すると、後任として会長に就任しました。
そのときも固辞したのですが、投票で決まったことだから1期だけでも…ということで引き受け、そのまま現在3期目を務めています。

甲冑(鎧兜)武具の素晴らしさを、 多くの人に知ってもらうことが使命

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

会長に就任されて、保存会をどのようにしていきたいと考えましたか?

武士の甲冑(鎧兜)武具の素晴らしさを、少しでも多くの人に知ってもらいたいと考えました。
また、保存会は50年以上の歴史を持ちますが、会員は高齢の方が多いため、甲冑(鎧兜)武具の良さを知った若い世代にも入ってもらい、活性化させたいと思いましたね。
具体的には会誌の発行や定例会など今までの活動の他に、本部にいた熱心な若い人たちを中心とした会を作り、彼らに年間予算を渡して若い世代向けの企画を立案・実施してもらっています。もう3年ほどになりますが、それなりに若い世代が甲冑(鎧兜)に関心を持つきっかけにはなりました。しかし、彼らが会員になるかと言うと別問題で、また難しいようです。

そんな会員数が伸び悩んでいるとき、甲冑(鎧兜)に興味を持ったベルギーの方が会員になって下さいました。日本語が大変堪能で、外国に日本の甲冑(鎧兜)に関心がある人はいますかと尋ねたら、ヨーロッパを中心に自主的にグループを作って活動していると教えてくれました。
しかも、たまたまその会の支部長が日本に来ているということで、紹介をして頂いたのです。
その方にお会いしたとき、甲冑(鎧兜)がお好きな人が集まるなら、本場である日本から情報をお届けするのでヨーロッパに私どもの支部を作りませんかと話をしたら、とんとん拍子に進みまして。2年前にベルギーに海外支部ができました。そうしましたら、ヨーロッパを中心にアメリカ、カナダ、ドイツなど世界各国の方たちが、そのベルギーの海外支部に一気に80名も入会して下さったのです。
日本には東海支部・広島県支部・近畿支部・岡山県支部の4支部がありますが、海外支部はどの日本支部よりも人数が多い、一番大きな支部になりました。

正月の武道館出陣式をきっかけに ロシアで甲冑(鎧兜)の美しさを披露

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

他にも毎年取り組んでいることがあるとお聞きしましたが…?

大きな行事としては、正月と成人の日に絡めて、毎年武道館で鏡開きが行なわれるのですが、鎌倉時代の出陣式というのを皆さんに見てもらうため、全員が鎧を着用して出陣の儀をやっています。これは伝統で長く続いている行事です。

その様子がたまたま目に留まったのかどうかは分かりませんが、昨年モスクワのボリショイ劇場で行なわれた「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」の開会式で、出陣式をやってほしいと要請がありました。出席者はプーチン大統領と安倍首相をはじめとして、日露双方の招待者がおよそ1,000人。一般の方は入れません。
そこに鎧を20領持っていき、ロシア人10人、日本人10人が着用して出陣式を披露しました。ロシア国営放送の生中継が入ったり、ゴルバチョフ元ソ連大統領などの要人もお見えになるところで日本の甲冑(鎧兜)の美しさを披露できたというのは、保存会にとって非常に良かったと思っています。

甲冑(鎧兜)の魅力は、 当時の最先端の技術が結集されているところ

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

甲冑(鎧兜)の魅力はどういうところにあると思いますか?

甲冑(鎧兜)というのは鉄、金、銀、銅、合金等の金属、皮革、布や織物、あとは組み紐、染色や文様に漆。ありとあらゆる当時の最先端の技術が結集されています。
武士にとって実用的でありながら、これほど個々の美意識と個性が表れた武具は世界でも類がないと思っています。

武士の個性というお話がありましたが、当時「こういう甲冑(鎧兜)を作ってほしい」と注文できるお店はあったのでしょうか?

戦国期の文献に出てくるのですが、具足屋(ぐそくや)という甲冑(鎧兜)を作って、売る店がありました。その下請けとして、鎖を専門に作る人、小札(こざね)を専門に作る人、漆専門、組み紐専門…といったように、それぞれ専門とする職人が80人くらいいたようです。職人に発注してひとつにまとめ上げるのが具足屋なんですね。
位が上の武士から甲冑(鎧兜)が注文されると、それに則って具足屋が武士と話し合い作っていたようです。一方でお金の問題もありますので、具足屋が既製服みたいなものを店頭に置いて、それを買う武士もいたようです。
また、最下層の武士用にレンタルもありました。

外国の方と相互理解を深めるためにも、 まずは自分の国の文化・歴史を知ってほしい

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

保存会では甲冑(鎧兜)を中心に、武具全般を対象にした研究もされているとか。どういった内容でしょうか?

今まで保存会は、文化的な価値として「甲冑」(鎧兜)に目を向けていましたが、今後は歴史的な面で「甲冑」(鎧兜)を見直し、深く研究していく必要があると感じています。
例えば過去に古文書で「甲冑」(鎧兜)のやり取りが書かれているのを見つけ、どれがその甲冑(鎧兜)に該当するのか、この歴史上の人物は実際こんな格好をしていたのかなど、読み解くこともできました。
このように様々な古文書や当時の資料から情報を見つけ、今ある甲冑(鎧兜)や武具と結びつけることで、さらに深い知識を得て、本当の意味での文化と歴史が分かるのではないかと思っています。

若い世代に向けて、メッセージをお願いします。

外国に憧れる好奇心もとても大切ですが、まず自分が生まれ育った国のアイデンティティーを確認してほしいですね。
自分の国の文化や歴史を通して、外国の文化や歴史も知ることができるし、自分を知ってもらううえで日本という国の背景や性質を伝えることもできる。自分の国を知ることは、相互の理解を深めるうえで必要なことだと思います。
文化や歴史に触れる方法は様々ですが、甲冑(鎧兜)や武具もそのうちのひとつです。ぜひとも勉強して興味を持って頂ければ大変ありがたいです。

社名・役職などはインタビュー当時のものです。

インタビュー:2019年12月

経歴

平成26年6月

一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会 会長(現任)

一般社団法人 日本甲冑武具研究保存会

一般社団法人日本甲冑武具研究保存会 永田 仁志

1961年に甲冑(鎧兜)を中心に武具全般を対象にした研究と保存活動を行ない、愛好する会員たちの親睦のための集まりとして創設。
日本で唯一文部科学省による認可を受けた甲冑武具の研究団体として海外でも認知されている。

日本甲冑武具研究保存会
〒162-0801
東京都新宿区山吹町350 鈴康ビル201号

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